この世界が偽りだとしても
シャラン、シャラン


店に入ると、客を知らせる鈴が可愛く鳴った。




目の前のウィンドウには、綺麗に並べられたケーキと砂糖菓子が輝いている。

店の中は甘い香りでいっぱいだ。少女はこの匂いが好きだった。







「おや、リダスちゃん!久しぶりだねぇ、元気かい?」


気前の良い店主が陽気に話しかける。先程の客とは違い、自然に接しられている。
リダスと呼ばれたこの少女はこの店の常連だ。

「えぇ、元気よ。おじさんも元気そうで何よりだわ」

リダスはふわりと笑って商品を見回す。


「今日も買い出しかい?どれにする?」

店主はにこにこと喋り続ける。



「そうね…それじゃぁ、いつものと−

あ、コレ新作ね!じゃぁ、コレもくださいな。

それからシャンパンも」


彼女はケーキが並ぶウィンドウの中から、いつもの真っ赤な苺が乗っているショートケーキを10個、一際目を引いた豪華なケーキを10個、そして一本のシャンパンを注文した。




「いつもこんなに買って行くお客さんはリダスちゃんだけだよ」

ははは、と陽気に笑いながら商品を箱に入れていく。少女はその過程を見て微笑む。


「そうでしょうね」

クスクスと彼女が笑い、店内の様子を見回していると店主は箱を差し出した。


「はい!新作のケーキは美味いぞ!今年一の自信作だ!」

常連さんだし、お金は安くしとくよ、と店主は笑いながら言う。

「帰ったら早速頂くわ。ありがとう」

彼女はにっこり笑って、丁寧にお礼を言う。





そして店を出ようと歩き出す。そんな彼女の背中に、新作ができたらまた来てくれよ、と店主が投げ掛けた。


彼女は振り返り、


「えぇ、楽しみにしてる」


と、嬉しそうに返すと、大きな箱を片手に店を出て行った。
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