てとてとてと
 思わず駆け寄って、
 思わず手を出して、
 思わず逃げ出していた。

 自分勝手な振る舞いで、悪い癖だと思う。

 勝手な真似をして、
 勝手に関わって、
 自分勝手で無責任すぎる。

 そう怒られたことがあった。

 確かにその通りだと思う。

 自分の行動には責任を持て、とも言われた。
 それはまた別件ではあるが、気をつけるようにはしている。

 今回の件も、多少後腐れはあったかもしれないが、
 会う機会はもうないだろう。

 贖罪の機会がないから好き勝手していいのかと言われれば、そうではないのだが。


「でもなあ。体が勝手に動くんだよなあ」

 危ないと思ったら、手を引っ込めてしまうように。

 車に轢かれそうな猫を見たら、思わず身構えてしまうように。

 思うよりも早く、体が動くのだ。

 そして、その行動に後悔したことは、あまりない。

 それを自分勝手と言うのだろうか。
 言うんだろうなあ。

 口より先に手が出たことは、あまりないが、他人の言うことに従わないことが多々ある。

 今回もそれに入るだろう。

 あの女の子はお礼を言おうとした。

 それも笑みを浮かべて、感謝の気持ちを精一杯浮かべて。

 十分伝わった思い。
 だからもういいだろう、と立ち去った。

 わざわざ見る必要なんてなかった。

 苦々しく変わっていく、綺麗な笑顔なんて。


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