てとてとてと
「さあきりきり歩くッ」


 率先して前を行く絵理香がいて。


「女王猫さまは健在だな」


 不適に笑う弘瀬がいて。


「ふっ。俺より早く歩けるかな」


 いつも張り合う千草がいて。


「みんな元気だなあ」


 俺を見て微笑む茉莉がいて。


「それじゃあ、行きましょう?」


 隣を一緒に歩く彩音がいる。


 この一年間は大変なことばかりで、それだけに思い入れが強い。

 誰か一人が欠けてもいけない、そんな絆がいつのまにか出来ていた。


「ああ、そうだな」


 坂の上にある学校に向かって、一歩前に出る。


 今日は卒業式。
 記念すべき、お別れの日。


 淋しさと悲しさと、
 一抹の不安と喜びを隠しながら、
 今日までの思い出を振り返る。

 ぼくらが抱く、思い出を。

 卒業式のある日から、今年一年を振り返った。

 それは、互いの
 手と手と手と、
 繋いでいった記憶。



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