白衣越しの体温
「お前さ、あの場所。守ろうとしてたんだな。」
返事がないことはわかっている。
俺は声に出せずにいた誤解を眠る九鬼島に謝ろうとしていた。
「ごめんな、九鬼島。お前が思っているように、大人は狡いんだ。」
ぴくっ…
「………先生…?」
意識がもどったのか?
聞かれてた?
…閉じているのか開いているのか、虚ろな目は俺をとらえたようで。
ぱくぱくと口を動かしていた。
もし神というものがいるのなら、どうしても俺に直接謝らせたいらしい。
「お前…こういうときに起きるなよな…」
はぁ…
「あの…すみ「あー…なにもいうな。いい、いや。あぁ。悪かった。もうわかってる。…だから、今は寝てろ…。」
そっと九鬼島の目を手で覆うと次第に寝息が聞こえてくる。
俺は無意識のうちに九鬼島に顔を近づけていた。
ピタ。
ばっと音をたてて退く。
俺は…今なにを?
何をしようとした?