白衣越しの体温
〜車の中〜
「まったく、驚きだな。」
慧はバックミラーごしにこちらを見て言った。
「俺も驚いたよ。なんせ一度も顔合わせたこともないし、ポストでも苗字みたことないし。偶然ってあるんだな。」
なんと、九鬼島は、俺達と同じマンションに住んでいたのだ。
15階建ての703号室が九鬼島で1203号室が俺で1204号室が慧。
多分苗字を見かけなかったのはコイツの家は会社名義で購入しているからだろう。
慧とは高校時代からの付き合いで同期。そして親友だ。
家も隣で学校へ行くのはいつもどちらかの車に乗ってというのが日常である。
そんな訳で今日は俺の車を慧が運転して家路についていた。
何故かというと俺は大荷物を抱えていて運転所ではないからだ。
しかし…この状況はまずい。
俺は送っていってやろうと保健室で眠る九鬼島を起こしにかかった。
が、起きない。揚句に俺のワイシャツをしっかりつかんで離さないのだ、
仕方なしに抱っこして
車に下ろそうとすると…今度は抱っこした形から離れなくなってしまった。
目が点になって固まっている俺をみて慧が爆笑していたのは言うまでもない。
すりっ
「うわっ」
「すっかり懐かれたな(笑」
「コイツ…わざとやってないだろうな」
今現在、説明のとおり九鬼島は俺の膝の上にいる。首に手を回されピッタリとくっつかれればいくらなんでもいろいろと毒だ。
俺じゃなかったらどうなっていたことか。
「本能的に信用されたんだろ。俺がみたところ九鬼島は一匹狼だ。意識があったらそんなことはしないな」
「それは喜ぶべきなのか…?」
と問うと
それに可愛い女子高生に抱き着かれても、悪い気はしないだろ?
と茶化された。
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