白衣越しの体温
「聞いてくれてありがとうございました、…お礼に何か作りましょうか。台所、かりますね。」
簡潔な礼を述べた九鬼島はいつもの淡々とした態度で台所へと向かって行く。
あとを追って俺も台所にいった。
「今多分何にもないぞ」
「大丈夫です。家から食料持参したんで。少し待っていて下さいね。」
本当に泊まる気で出てきたのかこいつは。
そこまでしてもらってはなんだか泊めてやらんと悪いような気がして、ソフトに断りをいれることにした。
だって、立場的にまずいだろう?
だが、やはり九鬼島は一筋縄でいくような奴ではなかった。
「九鬼島、そんなことまでしなくていいんだぞ。」
という俺にやらせてください。
とたのむ九鬼島に断りを入れることもできず淡々と作業をこなす後ろ姿を眺めていることしかできなかった。
「新妻みたい。って、思った?」
後ろからひょっこり顔を出してきた慧がからかうようにして言う。
「…まさか。茶化すなよ。」
慧は一人で暇だったのか、戻って来るように言われ、俺達は再び酒盛りを開始した。
しばらくしてでてきた料理は男の一人暮らしでは食べられないであろう凝ったものばかりが並べられた。
「美味いな。良い嫁になるな。(料理に関しては)な、孝明。」
「あぁ。そうだな。」
それを俺に振るのか。
「それはどうも。なんなら貰ってくれますか。自分確実に婚期のがしそうなんで。」
「本気か。」
「半分くらい。婚活とか面倒ですから。かといって見合いは絶対に嫌です。」
それは俺たちなら良い・・・・・・ということだろうか。
「高校生の会話じゃないな。なんで恋愛することからが除外されてんだよ。」
けらけらと笑いながら突っ込みを入れていく慧。
そんな慧を見てしれっとした顔で「愛や恋に永遠はないのですよ」と答えた。
淋しい奴ですみませんねぇ、と半ばヤケだ!とでも言うように先程出してやった烏龍茶を手にとりグビッと飲みほし……
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