白衣越しの体温









「おっおい…。そういうのダメだって…冗談はよせ。」




されるがままに倒されて、かろうじて平静を装ってはいるが正直キツイ。


押し倒されるなんて人生初の出来事だ。しかも相手は生徒ときている。

九鬼島はそんな気は毛頭ないんだろうが…俺も男だ。いや、お前だからなのかもしれないが…


いくら生徒でまだガキだからって…。


しかも九鬼島はいちいち色っぽい。…妖艶…という言葉の方がしっくりきそうだ。


そうやって考えている間にも九鬼島の熱をもった身体は俺に絡み付いてくる。



俺の基礎体温が低いせいかコイツの体温は温かくて心地がいいと感じた。


熱い吐息が耳にかかるたびに麻酔をかけられたように身体が動かなくなっていくのがわかった。















友人が自分の生徒に押し倒されている様子をしばらくぽかんとみていた俺は、はっとして止めに入った。



ぐいっと手首をつかみ慧から無理矢理引きはがして、怒鳴り付ける。


「やめろ九鬼島っ!女の子がそんなはしたないまねをするもんじゃないっ」




「ぇっ……………」


九鬼島は一瞬怯えたような表情を見せたかと思うと、今度は黙ってしまった。



「悪いな孝明…」


慧は倒されていた身体を起こし眼鏡をかけなおす。



ばつがわるくなった俺は取りあえず謝ることにした。

「……………すまなかったな、九鬼島。少し強く言いすぎた。」


びくっと九鬼島の肩が跳ねる。
「いっいえ…大丈夫です。私こそ…申し訳ない。」






暗い空気が漂うなか

パンッ

という破裂音とともに慧が痺れを切らしたかのように
仕切直しだ!のむぞ!と言った。








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