白衣越しの体温








俺が承諾したことを確認した慧はとっとと自分の部屋へ帰って行った。


九鬼島は置いていくな、というような目線で慧を見てたがコソコソっと耳で何かを囁かれたと思うと大人しく見送った。




しばしの沈黙。




さっきまで様子はおかしいにしろ明るく酒を注いでいた姿はどこへやら、黙りこくる九鬼島にそろそろ苛立ちを感じていた。


「悪かったな。慧のところに泊まりたかったのに止めるようなまねして。」


もう投げやりな言葉しか出てこない。

かっこ悪いな・・・・・・。


「ちっちがっ」


「なにが違うんだ。」

かっこ悪いと解っていても、自分を押さえられなかった俺は、俯いて目を合わせて話そうとしない九鬼島の顔を上げようと手を伸ばした。








まただ。

九鬼島はびくっと怯えたように後ずさる。

自分から蒔いた種なのにショックを受けている俺はほとほと馬鹿だと思う。




「ぅぁ…」


あれからずっとそうだ、明るく振る舞っていてもどこか俺に距離をとっている。




「そんなに…俺が怖いか、」

嫌われたものだ、まあ、自業自得だが。

教師が生徒に嫌われるなんてよくあることなのに……コイツにだけは、嫌われたくないと思う自分がいて。

「ちがっ」

「だから何がっ!!・・・・・・………九鬼島?…………泣くほど怖いか?……悪かった。」



ぽたぽたと滴る雫。拭ってやりたいが俺には触る資格などない。


「ちがう…です、こわ…くな…かなっい、です」



「た…だ、嫌われた…かとおもっ…ふぇっ…」


首をふってちがう違うと泣きじゃくり鳴咽を繰り返す。


「わた…し、あっつ…っくなっちゃっ…て、身体、おかしっ…くて、せんせっ…はしたなっ…うぇっ……………ごめ…なさっ…」


「悪かった……悪かった。怖い思い…させたよな。」




ごめん。本当は、なんとなく慧にくっついているお前を見たら胸のあたりがもやもやしたんだ。


自分でもよく解らない感情がグルグルと渦巻いて…結果的にお前を傷つけてしまった…


最低だ。






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