白衣越しの体温
式は無事に始まりはしたものの、無事に終わってはくれなかった。
新入生代表の言葉、と声がかかり、私は舞台に上がり役目を果たした。
そこまではいい。
舞台から下りるとき、合ったのだ。
目が。
それはもう、ばっちりと。
そのとき私は悟る。奴だと。
私の予感は数分後に確実なものとなった。
担任と教職員の紹介で確かにこちらをみながら彼は言ったのだ。
「えー…新入生の皆さん。入学おめでとうございます。保健医の霧島慧(キリシマケイ)です。以後宜しく。それじゃあ、まあ、後ほど。」
後ほど。
その言葉は私にむけてのものか。
その言葉に深い意味がこめられているような気がして、式が終わり生徒が下校していくなか、私の足は保健室へ向かっていた。