白衣越しの体温




式は無事に始まりはしたものの、無事に終わってはくれなかった。


新入生代表の言葉、と声がかかり、私は舞台に上がり役目を果たした。



そこまではいい。

舞台から下りるとき、合ったのだ。

目が。

それはもう、ばっちりと。


そのとき私は悟る。奴だと。


私の予感は数分後に確実なものとなった。


担任と教職員の紹介で確かにこちらをみながら彼は言ったのだ。

「えー…新入生の皆さん。入学おめでとうございます。保健医の霧島慧(キリシマケイ)です。以後宜しく。それじゃあ、まあ、後ほど。」



後ほど。

その言葉は私にむけてのものか。

その言葉に深い意味がこめられているような気がして、式が終わり生徒が下校していくなか、私の足は保健室へ向かっていた。
< 9 / 141 >

この作品をシェア

pagetop