白衣越しの体温
~誰が譲るか~
やめた。
俺は教師じゃない。
保険医だ。
あの場所だって俺がそこに居たいときだけなにか理由をつけて散らせばいい話だ。
不良だろうがなんだろうが、中身はいい奴かもしれないじゃねぇか。
どちらにせよ俺には関係のない話だ。
それに何時来るとも知れない奴らを待つなんて疲れるだけだ。
俺は淹れたてのコーヒーに口付けた。
ガラッ
「慧?」
ホームルームが終わったのか、保健室の扉から孝明が顔を覗かせる。
中へ入ってくるのと同時に立ち上がり孝明のぶんのコーヒーを淹れてやった。
「・・・孝明。どうした?一時間目からないのか。」
コトリと音を立ててマグカップをのせる。
「あぁ、」
返事を返した孝明は、違和感にぐるりと保健室を見回すと、口を開いた。
「・・・九鬼島はどうしたんだ?」
「・・・庭。」
「そうか、。」
孝明は苦笑を浮かべてコーヒーを喉へ流し込み、ふぅ、と息をつくと話題を切り出した。