白衣越しの体温
視線をたどると、そこには妙に冷静な顔をした藤堂がいた。
しっかりと九鬼島を見据えてコクリと頷き、頑なにその場に座り続ける二人の肩にそっと手を置いた。
再び頷き目を閉じると二人ははっとしたように
でも、といいかけるが藤堂がゆったりと首を振ると渋い顔をして立ち上がった。
なぜかその動作には有無を言わせない説得力があった。
「ありがとうございます」
「こっちの台詞だね、そりゃぁ。」
困ったように笑う藤堂と心配そうに九鬼島をみやる二人を俺は悪い奴には思えなかった。
だが、それとは裏腹にもやもやとした黒い影が胸の奥に渦巻くのを感じていた。
「今度、出来たら、話し、聞いてくれますか?」
もちろん
返事は返さないものの、そういった表情で九鬼島に背を向け塀によじ登った。
あとに続く二人の背中をあっさりと見送った俺は本当になにをしているんだろう。
とりあえず、九鬼島にはみっちり説教をしてやらないと。
とぼんやりと思った。
あいつらに対する怒りより、九鬼島に対しての不満のほうが今は大きいのか、
なんてどうでもいい分析をしているあたり、俺はおかしくなったか、パニクり過ぎて逆に冷静になってしまったに違いない。
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