白衣越しの体温
こんなんよくないわ。
なんでや、いつもなら女の子は絶対にかばっとんのに。
美夜燈にしてはおかしな選択だった。
無言で黙々と前に進む美夜燈を神妙な面持ちで見つめていると、途中でぴたりと立ち止まる。
「降りて。」
そういって大学側に飛び降りると走ってもと来た方向へ走りだす。
義琉もその後に無言で続く。
あぁ、やっぱり。
俺らの知ってる美夜燈はそーゆーやつや。
美夜燈のことだからこの先にきっとなんかあることも解る。
今は何も言わずついていくのが得策なのだろう。
少しして、美夜燈の足が止まりそっと壁に耳をあてる動作を見て、 なにが目的なのかを理解した。
確かに、あの状況で冷静に話しができるとは思えないし、肝心なところが聞けずに内容を掻き回すだけだ。
九鬼島ちゃんのためにもあれが最善であったのかもしれない。
美夜燈はこう見えて大人なのだ。
「………でもそれ、ごっつ怪しいで。」
「言うな。俺達もやるんだぜ?」
義琉が苦い笑いを浮かべるのをみて
あははー確かに、と肩をすくめて笑い、俺達はならんで耳を寄せた。