言霊師
それは、恋心からではなく、一言主がそう願っているのが分かったからでもあった。

どこかうさん臭いとは言っても、ヒョウリは彼を尊敬し、また、かなり頼りにもしていた。

一方的に助けられるばかりかと思っていたのが、ムメを助ける事で恩返しになるのなら。


「神も、自分の幸せを願って良いと思うんだけどな…そうはいかない、か。」


着替えを終え髪を整えたヒョウリが朝食、兼昼食を適当に探していると、ふと一言主の気配が強くなった。


「一言主…?」


名を呼ぶと、やはり神は姿を現した。


「忘れ物ですか?覗きですか?」


「たわけ者め。誰がお前を覗いて楽しいか。」
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