言霊師
声をかけて、その視線の先を見る。そこには、一言主を奉った神社があった。


…自分はあの場所をよく覚えている。小さい頃、よく遊びに来ていた場所だ。


真の祠は別にあるのだから、そこに神はいない、と親戚には言われていた。
一般の目を誤魔化す為に手入れはしてあるが、周りを自然に囲まれた場所にあるので、いつも少し薄暗く、花びらや葉が足元を覆い隠していた。
四季によって色合いを変える樹木や、装飾もなくシンプルで小さい社殿に続く石畳。向き合って座る狛犬。
そして、真っ赤な鳥居。

それら全てが、幼いムメにとって魅力的だった。
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