言霊師

『…笑えるんだな。』


『ぇ?』


『いや、何でも?』


ザワ…と、木が揺れる。一気に風にさらわれた葉を見て、季節が徐々に冬へと移る頃だったと思い出す。


『…あぁ、ほら。女神が顔を出し始めた。もう暗くなるぞ。気をつけて帰れよ。』


空に浮かび始めた月を見上げる二人の間を、だいぶ冷たくなった風が通り抜けた。風に揺らされた木から、残りの葉が全て散ってしまったかと思うくらい、大量の葉が舞い上がる。
少女は目を開けていられなくて、目を細めた。

青年の姿は、葉の向こうにかすんで見える。
< 131 / 235 >

この作品をシェア

pagetop