言霊師
『クソジジィ共と喧嘩して出て来たが…思いがけず、面白い縁を結んだな。』
葉の間から見える、何故か風に踊っていない着物と、柔らかく笑みを浮かべる口元。
風の音が青年の声の邪魔をしないように避けているのか、少女の耳にはっきりとその言葉が届く。
『また会おう。
今とは違う形、違う姿…
違う関係で。
再び出会う事は、定められた運命。避けられぬ事。
本来ならば、その時初めて結ぶはずだった縁が、今結ばれた。
…面白いな。』
この私ですら、予想していなかったよ。
そうして、青年の姿はもう何処にも見つける事は出来なかった。