言霊師
その時に青年が言った言葉の意味は、少女にはまだ分からず、ただ、やはり青年はヒトではなかったのだと確信しただけだった。


―――言霊を視るお前は、ただのヒトとは違う。だから、異形のモノが気安く姿を現すのだ。向こうに誘い込まれぬよう気を付けろ。


そう、祖父や両親から言い聞かせられていた為、その日出会った青年の謎めいた言葉も、深く考えないようにしてしまったのだ。


やがて、その日の事は記憶の引き出しの奥へとしまわれたまま、思い起こされる時は来なかった。

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