言霊師
堂々たる宣戦布告をした後。

ヒョウリと勇次は、一言主とムメを追うのをやめ、キャンパスへ向かっていた。
坂の上にあるキャンパスで先刻何があったのか知らなかったヒョウリが、擦れ違う人の会話から事件を察し、見に行くと言い出したからだ。


「勇次がやったの?」


「いや、この大学にいるもう一人の言霊遣いが…」


「仲間?」


「……あぁ。少なくとも、あと一人はいる。」


無残に倒れた時計台の周りには、既に生徒よりも事務やら教授やらの姿の方が多く、遠巻きにしか見る事が出来ない。
その中に苦手な教授を見つけたヒョウリが、嫌そうな顔を惜しげなく披露する隣りで、勇次は考えていた。

思えば、この時計が倒された時までは誰かを傷付けるのが怖かったのだ。きっと、こんな風に自分も殺られると思って…この人の言う通り、怯えていたんだ。
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