言霊師
それでも運ばれて来たコーヒーをゴクゴク飲む彼に対し、飲まない方がいいんじゃないかと注意した勇次の言霊が目の前に浮かぶのを無視し、ヒョウリは笑顔を作る。

笑顔と言っても、目を少し伏せて口端を吊り上げるその不敵な笑みは、心強くもあるのだが、勇次は苦笑いを返すしかなかった。

そして、気付いた。

どこかで…この笑い方を見た気がする。気のせいなんかではなく、確かにどこかで―――


「勇次、顔色悪くない?
カフェインだめだった?…って、おい!勇次!?」


そうだ。あの時だ。


傾く視界の端に映ったヒョウリは、何故か彼と重なって見えた。

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