言霊師
驚いたのはヒョウリと店員だ。コーヒーを数口飲んだ後に突然倒れたのだから、当然店内もざわつく。
駆け寄る店員に混じり、店長らしき人まで様子を見に来て事情を聞かれたヒョウリは、体調が悪かっただけですと誤魔化した。


「彼は常に貧血気味なんです。すみません、お騒がせして…」


本当の事なんか知らなかったが、騒ぎを大きくしてしまうのも面倒だと思ったヒョウリは、動きの早い店員により呼ばれた救急車が到着する前に

言霊を紡いだ。


「―――動(ドウ)。」


すぐに、目を開かないままの勇次がヨロヨロと立ち上がった。
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