言霊師
悩んだ末、慎は自分の従兄弟だという事だけを伝えようと決めた。

神が向こうの手に落ちた事も隠し、公務の為に暫く会えないと嘘をついた。
言霊が見えるムメと勇次が相手だったが、それを告げる前に数多くの言霊を空に泳がせておけば、それらに紛れてしまい、嘘はバレなかった。

そんなヒョウリの気も知らず、一言主に会いたいと毎日ぼやくムメや、本当の仲間が出来たと喜び毎日遊びに来る勇次。



―――彼らがいるから、ヒョウリは、憎しみに身を染め上げそうになる自分を抑える事が出来ていたのかもしれない。


怒りに任せて、禍々しい言霊を操りそうになるヒョウリを

ただ彼らの存在だけが


繋ぎ止めていた。
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