言霊師
普通に過ごしたい。
せめて…この短い間だけでも。
普通と異常の境を自分が見失う前に
何の変哲もない日々を。
僕はそれを
―――その思い出だけを持って、逝きたいから。
夢のような時間なんか望まない。
辛い事で心身がズタズタに切り裂かれるばかりだった、昔のような日々でなければそれで良い。
自分の部屋で寛ぐムメと勇次を見ながら、ヒョウリは一人、窓の外を見ながら静かに願った。
予想していた言霊遣い側の動きはないが、気が付くと文化祭初日―――霜月の始めの土曜日は、明日へと迫っていたのだった。