言霊師
どこか話が噛み合わない不思議さに訝しげな顔をする悠だったが、自分の方を向き直った慎の表情を見て、血の気が引くのを感じた。

冷たい眼。

柔らかく笑う口元。


「もう一度言うが。期日は明日だぞ?悠」


「それは…知って、ますが…?」


「貴様がどう勘違いしているのかは分からないが、このままでは明日の今頃…命の保証は出来兼ねるよ。」


突然の話の展開に着いて行けず、悠はただぼんやりと慎の顔を眺めた。
文化祭までに、言霊を消す女を始末する。という約束と引き換えに力を得たのは、勇次だ。自分はその監視を任されただけのはず。

命の保証―――?

確かに、勇次の裏切りを許してしまった責任はあるかもしれないが、その後の彼を放っておけと命じたのは慎だ。

何かがおかしい。
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