言霊師
気付くと、悠は慎邸の敷地の外に立っていた。
自力で歩いた記憶もないので、どうやら、言霊の力で屋敷から追い返されたらしい。

何気なく空を見上げると、雲に隠れて星も月も見えなかった。明日は晴れないのかな…とポツリと呟く声も、いつもとは調子の違う曇った音となっていた。


「退屈、だったんだ。だからゲームのつもりで…」


親戚の神官から御伽話のように聞かされた、言霊師の話。あまりにも真剣に話すものだから、真偽を確かめようと一言主の祠に行ったのだが、真の祠には辿り着けず。
やはり嘘かと鼻で笑った直後、慎が現れて“眼”をくれた。
ゲームを始める感覚で手を出した、言霊遣いの道。
だが、現実ではリセットなんか出来ない。そんな当たり前の事を今更になって漸く理解する。
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