言霊師
「道を選ぶという事は、選ばなかった選択肢……可能性を捨てるという事。

彼らは、実に見事に、私に都合の良い道を選んでくれるな。

悠も、そして、勇次も。」


屋敷の戸締りを命じ自室に戻った慎は、つい先程悠が発した言霊を拾い口元を綻ばせた。
もう悠は使い物にならないかとも思ったが、明日…いや、文化祭の間は様子を見ようか。そう決め、枕元に置いてある和紙と筆を手に取る。

墨を必要としない筆。

綴るのは文字ではない。


「…我が眷属が、卑しくも禁忌を犯そうとした。
その原因を処分したいのだが、如何か。」


慎が発した言霊は、筆に染み込み、墨の代わりとなる。言った事と同じ内容を和紙に書き連ねれば、紙は自然と青い炎に包まれた。
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