言霊師
やがてそれは蝶の姿を象り、外へ飛んでいった。

ふわふわと、それでも確かに目的の場所へと辿り着くであろうそれを、屋敷の中から感情の失せた目で見つめる者が在った。

行く先は、知っている。

その場所に、自分は先日まで居たのだから。


だけど、


「何故…」


何故、遣いを飛ばすのか。


一室から出る事すら叶わないという、神としては屈辱的な状態にある一言主は、慎が送り出した蝶の形の文を見やりながら、考えを巡らせた。


そして、一つの答えに行き着くのに、そう時間はかからなかった。
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