言霊師
――――――


「~~~っあのバカ!!!何で陰陽術なんか使えるのよ!?」


喚き散らしているのは、一言主を祠る神社の敷地内から出られないでいるムメだった。結界のような見えない壁に隙間がないかウロウロしたり、言霊を使って外に抜けられないか試してはみたのだが、いずれも失敗。


…狙われてるのは私なのに。

なのに、急に蚊帳の外に追いやられてしまうなんて―――

ペタンと地面に座れば、視線が低くなり幼い頃に戻ったように感じる。だからなのか、ムメは無意識に呼んでいた。


「…一言主様…」


その言霊だけは結界に阻まれずに外へ翔けた事など知らず、途方に暮れて空を仰ぎ見る。


「…お願い…ヒョウリを守って…一言主様…」


珍しく消さずにいる言霊に囲まれながら、願った。

言霊は外に出られなくても、きっと願いは届くはず。
それは、神にも、ヒョウリにも。

だってこの空は、繋がっているのだから。
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