言霊師
――――――

「何だ…おびき出さなくても、始めから舞台は決まってたのか。
それに、勇次はあいつの所にいるみたいだし…。」


自分の言霊を操られたヒョウリだったが、今はその怒りよりも伝言の内容に意識が集中していた。

言霊は、勇次を捜し出したのだろう。そして、慎に捕まり術をかけられた。それは勇次が慎の近く…或いは共に居たからだとしか考えられない。だとしたら、急がねばなるまい。

慎は、契約を守れなかった勇次をタダでは済ますはずがないし、彼の性格からして、勇次を利用して卑劣な罠を仕掛けてくるかもしれない。

だけど、だからこそ、


「急ごうか。…勇次に約束したんだ。」


―――僕につくなら、散る事はないよ。


そう、約束したから。
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