言霊師
――――――
一瞬、願いが届いたのかと思った。或いは、錯覚だと。
「え…一言主様…?」
座り込んでいたムメが顔を上げると、目の前には愛しい神の姿があったのだ。初めて出会った時と同じ姿で、自分を見下ろしていた。
素早く立ち上がったムメは、久しぶりに会えた喜びを伝える事すらせずに、眉寝を寄せ唇を噛み締めた。
それは、ヒョウリが必死に隠そうとしていた事実―――神は既に慎の手に墜ちたという事を、知っていたから。ヒョウリがあまりに必死だから、気付かない振りをしていたのだけど…。
「…莫迦ね、ヒョウリ…」
貴方の作戦は、読まれていたみたいよ。
そう呟くと、笑顔を浮かべながら告げた。
「“初めまして、一言主の神。私は賀茂の傍系に名を連ねる、ムメと申します。”」
それは、力を授かる時に言った言葉だった。
一瞬、願いが届いたのかと思った。或いは、錯覚だと。
「え…一言主様…?」
座り込んでいたムメが顔を上げると、目の前には愛しい神の姿があったのだ。初めて出会った時と同じ姿で、自分を見下ろしていた。
素早く立ち上がったムメは、久しぶりに会えた喜びを伝える事すらせずに、眉寝を寄せ唇を噛み締めた。
それは、ヒョウリが必死に隠そうとしていた事実―――神は既に慎の手に墜ちたという事を、知っていたから。ヒョウリがあまりに必死だから、気付かない振りをしていたのだけど…。
「…莫迦ね、ヒョウリ…」
貴方の作戦は、読まれていたみたいよ。
そう呟くと、笑顔を浮かべながら告げた。
「“初めまして、一言主の神。私は賀茂の傍系に名を連ねる、ムメと申します。”」
それは、力を授かる時に言った言葉だった。