言霊師

「生憎だけど、私達は死なないし勇次も助かる。」


慎と睨み合ったままだった氷理がハッとして声の主を見ると、不敵な笑みを浮かべる夢芽がいた。


「…だから、貴方は自分の散り様を考えたらどう?」


その拳が僅かに震えているのが、怒りからなのか怯えからなのかは分からないけれども。


「貴方が何者でも関係ない。」


彼女が神に愛された理由が、改めて分かった気がした。


「私達は、此処で朽ちるわけにはいかないのよ。貴方には解らないでしょうけど。」


「…成る程。では、見せてもらおうか。―――行け。」


目を細めた慎からの一言を機に、操られている悠と勇次が再び斬りかかってきた。


はずだった。
< 229 / 235 >

この作品をシェア

pagetop