言霊師
二人の目の前で、緋色が散る。思わず顔を逸らした夢芽を庇うようにしながら、防御の言霊を紡ごうとしていた氷理の表情が固まった。


「もう…やめたんだ。誰かの言いなりに…誰かに、怯えるのは。」


「ゆ…じ?」


「自分の身体くらい、自分の言う事聞かせないと…情けないから。」


目の前でゆっくり倒れるのは、悠だった。その身体に突き刺さるのは、勇次が握っていた刀。慎の縛を解いた彼は、荒い息を吐きながら氷理と夢芽を見ていた。


「心配してくれてたんだろ?嬉しかった。」


どんなに強い縛をかけられても、もしもそれに勝るものがあったのなら


「だから、戻れたんだ。有難う。」


もしも、こんな自分でもそれを見つけられたのなら


「―――慎!氷理と夢芽さんはあんたなんかに殺られない!絶対にだ!!!」


…命を賭しても守りたいんだ
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