言霊師

「あのさーヒョウリって、好きな人いる?」


帰り際に入った店でコーヒーを飲みながら、そんな事を唐突に聞かれ、ヒョウリは鈴木をジッと見た。


もちろん、気を悪くして睨んだのではなく、その言葉の本質を“視る”為に。


(…好きな人…ね。)


「お前格好良いだろ。だけどさ、彼女いないみたいだし…もしかして好きな人いるのか?」


鈴木の言葉は淡い桃色になり、『好きな人』という言葉だけが消えずに肩の辺りに漂っていた。


(ふーん。そういう事か。)


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