言霊師
「ないの?」

冷蔵庫の近くにいた言霊達が集まり、大きな『ない』という字を作っている。

どうやら、夕飯を作れるだけの食材はなかったらしい。


きっちりと答えてくれた言霊達に礼を言うと、ヒョウリは財布を手にして再び出かけようとした。


「あ、僕が帰るまでにさ」


家を見渡し、自分に注目している言霊達に声を掛ける。その言葉もまた、新たに言霊となっていた。


「テーブルの辺り、片付けておいてよね。…勝手に物を動かしちゃだめだろ?」


テーブルは、留守中、言霊達によって荒らされていた。
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