言霊師
一瞬、ムメの目が光ったように見えたが、錯覚だと気を取り直す。

ヒョウリは、話し方を忘れたように黙りこんでいた。

言いたい事はあるのに、声にならない。

―――それは、ムメの事なのか…?

そう尋ねたいだけなのに。

と、ムメはそんな彼を見下すように口端を吊り上げ、ズイと顔を近付けて告げる。


「…知らないだろうから、教えてあげる。

…言霊師の……」



殺し方。



耳元で囁かれた言葉は言霊となり、見事にヒョウリの動きを封じた。

冷たい汗が背中をつたう。身体のどこも動かないので、耳元に唇を寄せているムメの顔を見ようと必死で眼球を動かした。
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