言霊師
声に出さなくても、言霊になる場合はある。

ただ、心で強く思っていれば。

言葉は飲み込んでも、気持ちは隠せない。殊に、言霊師の前では隠し通せるわけがなかった。ムメが言霊を消してしまうまでの一瞬だったが、ヒョウリは確かにその言霊を捉えていた。

感情的になった為か、目が潤んでいる。それでも、かける言葉は見つからない。


「ずるいわよ。後からノコノコ現れたくせに、すぐにお気に入りになって…あの方に名を呼ばれて…」



名を呼ばれれば、神の守りを得た事になる。自分の名前が一言主に守られている事は知っていたが、その意味を深く考えなかったヒョウリは、今やっと分かった。

言霊師を殺すのに必要なのは、名前を言霊にして消す事だから。
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