言霊師
例え、ヒョウリの名が言霊になり消されそうになったとしても、かの神に守られているのなら、すぐには消せないだろう。

ムメの力でも、無理だ。


一族の者は、生まれながらにして言霊を見る眼を持つ。生まれてすぐに、他の子よりも能力がある事が判明した女児は、“ムメ”という名―――言霊を消す力を授ける目印となる名を与えられた。

“無”の音が入った名前を。
その瞬間から、自分の道が定められたのだ。

ならばせめて…―――


「私は、せめてあの方が私を見てくれるように…私の事を覚えていてくれるように、と。そう思った。
なのに、あなたは言霊師になってすぐに名前を守られた。悔しくてしょうがないわ。」
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