言霊師
俯いてしまったムメの表情は、長い髪で隠されている。悔しさは伝わるが、理不尽な気もしないでもない。

ヒョウリも、理由が分かれば説明してやりたいのだが、分からないのではどうしようもない。

けれど、一つ言いたい事がある。
それは、一言主について、ヒョウリが知っていてムメが知らない、唯一の事かもしれない。


「…一言主は、去年祠に顔を出した僕に、ある少女の話をしました。」

「少女…?」

「―――彼からすれば、あなたも“少女”だという事を忘れていました。
一言主は、あなたの話をしたんです。」
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