言霊師
信じ難いといった様子の彼女に少しだけ笑いかけ、その時の事を話し出した。


「僕は毎年、あの人…あ、いや、一言主に挨拶をしに行ってるんです。」


一言主を“あの人”呼ばわりしたヒョウリをムメが素早く睨む。だが、怒られる前に訂正したので、非難の言葉を浴びせられるのは回避できた。


「そこで、変わった力を持つ少女がいると聞かされました。…いずれ、出会うだろうという事も。」


ムメの瞳に光が戻り、ヒョウリを睨んでばかりでキツかった眼光は和らいでいる。
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