言霊師

「―――ぁ……」


目覚めて一番に神と目が合った彼女は、すばやく布団を剥ぎ、座り直そうとした。
恐らく神の前で畏まるつもりであっただろうその動きは、止められる。


「そのままで良い。」


「…ッですが…」


真面目なムメは、なかなか引き下がろうとしない。

―――が、至近距離で見つめ合っている事に突然気付いたらしく、顔を真っ赤にして俯いてしまった。


(…あれ?あの反応、どこかで見たな…)


呑気な感想を頭で反芻しているのは、もちろんヒョウリだ。彼はあまり色恋沙汰に興味がない為、そちらの方面には疎い。と言うよりも、ずれている。
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