言霊師
神は、契約に縛られている。それは一言主に限った事ではないが、契約の範囲内でしか動けないのだ。

一族を黄泉帰らせた時に交わした約束は、あまりにも重かったと思う。
けれど、人の命を軽んじるわけにはいかない。だから、その先の子孫の一生を費やして神に仕えるという約束を、契約として認めた。

ただ、もう良いのではないかとも思う。

長らく一族と共にいたが、最近特にその思いが強まった気がする。


守りたい者を、堂々と守れないから。


―――彼女は覚えているだろうか。初めて出会ったのは、本当は“あの日”だったという事を。

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