言霊師
「一言主様!!」


回想に浸る暇もなく、一言主はそのムメの声で現実へと引き戻された。


「…何かあったのか?」


「しょっちゅう、この人と会ってるって本当ですか!?」


「この人じゃなく、ヒョウリです。」


「…余計な事を話しおって…」


ヒョウリに愚痴るが、軽く無視された一言主は、白状した。自分がヒョウリの所へ(暇な時)たまに遊びに来るという事を。

生真面目なムメには、理想の神の姿があった。それを知っているから、触れたくなかった。

夢を壊された乙女がいかに恐ろしいか。

よく分かっていたから。
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