言霊師

「ヒョウリ。
あぁ…今年は、雪が降るのが早そうだ。」


「雪なんか、二度と降ら…」


「―――無闇な言霊を吐くな。
お前は稀有な存在。…弱みを言霊遣いに握られたらどうなるか、分からぬはずはないな?」


ムメはトイレなのか席を外していて、会話は聞こえないだろう。それもあってか、神に対して話しているというのにぞんざいな態度になる。

低い声で注意されたヒョウリは、それでもまだ空を見ていた。

眼光を鋭くして自分を見る一言主が、何を言いたいのかはよく分かる。


死にたいのか―――?


そう、暗に責められている。


「彼女を…ムメさんを、どうするつもりですか?」


何か言おうとして咄嗟に口から漏れたのは、そんな言葉だった。
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