人魚の涙 ～マーメイ・ドロップ～
「君…は……？」








僕は呻くかのように呟く。それにより、呼吸のペースが早くなっていたことに気づく。

―――血を流しすぎたようだ。
僕は一刻も早く、この状況を打開しなければならない、と感じた。








「君、さっきの娘………だよね？僕、怪我しちゃって………。よかったら、人を呼んできてもらえると、助かるのだけれど………。」

「………。」








彼女は、黙って僕を見つめている。
彼女の大きな瞳は、全てを吸い込んでしまうブラック・ホールのように黒く、妙な威圧感を持っていた。

彼女は立ち尽くしたままその場から動こうとはせず、ひたすら流れる僕の血をその瞳で見つめていた。








「………あの、聴こえてます………？」








僕は、だんだんと不安になってきた。
今の僕は、極限まで衰弱しきっており、これ以上悠長にしているような、暇と余裕を持ち合わせてはいない。
今現在の状況下にある僕が助かるには、彼女に助けを求めるしか、方法は残されてはいなかった。








「………」








ようやく声が届いたのか、彼女は僕の目を見据えながら、非常にゆったりとした歩調で、一歩一歩じわりじわりと近づいてくる。




彼女は僕の目の前まで来ると、ぴたりと動きを止め、その場に座り込んだ。
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