人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
あれはこの島に着いた朝だったろうか。
始めての一人暮らしに興奮していた僕に、早くも厳しすぎる現実がたたき付けられた。








僕の部屋に既に運び込まれていた私物。その私物は、どうやら僕が島に到着した数日前には早くも届いていたらしく、二日前にニュースで報道されていたなかなかに震度の高い地震と、不運にも接触してしまっていたらしかった。
室内は倒れたタンスと、中身の飛び出たダンボールで足場がないほどに埋め尽くされていた。




もし、実家であの状況に陥っていたのならば、両親と腕っ節の強い弟の手伝いにより、すぐに片付いていたのだろうが、生憎この島にはまだ、そのようなことを頼める程に親しい仲の人物がいない。




だから僕は、その日の朝から晩まで一日かけて、一人で自宅の整頓を済ませた。
もちろん体は筋肉痛。趣味にまわすような時間と労力はなく、まだしていないこともたくさんあった。

実家にいた頃は、なんと楽だったのだろう。ここに来て、人同士の繋がりの大切さをひしひしと感じさせられたのであった。
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