人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
………イロイロ………?




僕の頭に海の中での出来事が甦る。
どうやら海中で僕を助けてくれた少女は美姫さんであるらしい、とことは今明確な真実となった。

―――ということは―――。








「あ、あの…こんなこと聴くのって、あまりよくないことかも知れないけど………」

「………何?」

「………キス、した?」

「ええ」








サラっと彼女は言ってのける。
僕はよろける。疲れてもいないのに、膝が笑っている。

こんな美少女が、僕に、キス―――?
頭の中が空っぽになる。
真っ白いキャンパスのような空間に、一人取り残されたようだ。僕の意識は、再び彼岸へ向かおうとしていた。








「………どうかした?もしかして、私のキスが不満だった、とか………」








彼女の顔が少し、悲しげに見えた。僕は殺人でもしてしまったかのような罪悪感に駆られ、頭を全力で横に振り、その可能性が一切ないことを証明しようとした。








「そ、そんなんじゃないよ!!ただ、少し驚いただけ」

「なら、いいのだけど………。緊急時だったから仕方なかったのよ。もし気に障ったなら謝るわ」

「う………ううん、助けてくれて感謝してる。………ありがとう」

「…どういたしまして」








彼女は屈託のない笑みを浮かべた。
しかし、なぜかその笑顔は、本当の楽しさや嬉しさから来たものではない、という気がなぜかしていた。
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