人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
「………人魚ってさ、尾ヒレとか、あるものじゃないの………?」








僕は、苦し紛れにそう尋ねてみた。
どうしても、彼女が人ではないということが信じられなかった(もちろん、彼女だからという訳ではない。誰がそう告白しようと、僕は動揺していただろう)。








「あるわよ、もちろん。―…ただ、アニメみたいに思い切り魚、ってわけじゃないけど………。実際脚にあるけど、今は特別な処置を施して隠しているの」








―――…ホントなのか?
疑ってはいけない、と思うが、どうしても疑ってしまう。彼女の話すこと全てが、嘘ならよいのに、と思った。

いきなり人魚だと言われても、そう簡単に存在を認知することが出来ない。それゆえ僕は、どう対応していいものかも解らなかった。




―――今、僕の目の前にいるのは、何の変哲もない美少女だ。
彼女は自分を人魚だと言う。
…信じる、というのはとてもじゃないが簡単ではなかった。その言葉は、そんなに安っぽいものではないような気もしていた。
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