人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
…というわけで、僕はまだ自宅の整頓しか終えていないのだ。

何かをしなくてはならない、という使命感に駆られるのは、きっと僕がこの島になれておらず、もっとここを良く知りたい、と思っているからだろう。
島の事をよく知らないと、これからの生活が不便になることは、目に見えている。

それに僕は、知らないことを調べるのは結構好きな方である。………これを勉学に活かせていたのなら、この様な田舎に来ずに済んだのだろうけれど。




………という訳で、僕は今日の暇な時間を島の探索にあてることにし、年期の入った自転車の錆びたペダルをゆっくりと漕ぎ進めた。心地良い風が肌を撫でる。
時間も忘れ、僕は島を見て回ったのだった。








三時間程が、経過した。僕は足に少し疲れを感じたため、自転車を押し進めていた。自分の足で歩きはしたが、ほとんど得るものはなかった。もしかしたら学校に通い始める前から、友達が出来るかもしれないなどと都合のいいことを考えていたが、予想通り、そのようなイベントが起きることはなかった。
だがしかし、何も利益がなかった訳ではない。僕は島を周り、改めて認識したことが、一つだけあった。




………それは、この島は本当に狭い、ということだった。
なぜそう断言出来るのかと言えば、オンボロのこの自転車でも、二時間足らずで島を一周することが可能であったからだ(もちろん山の中などの細部までは見ていないが)。
目に付くものは、家と学校と、小さなスーパーと海沿いの教会だけ。生活に必要のないもの全てを排除したような作りをしていた。
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