人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
「………『水鳴 美姫』です。よろしくお願いします」
彼女はぺこり、と礼をした。僕が呆気にとられている目の前で、坊主頭の二人組の男子が「でかい胸だなあ」、「可愛いなあ」と呟き、にやにやとしていた。
だんだんと思考が回復してきた僕は、その場に跳び上がりたくなるような、喜びの衝動に駆られた。
―――すぐ会えるって、こういう事か―――!
僕の胸は高鳴り、踊った。理由はよく分からないが、言葉では言い表せないような至福を体一杯に感じた。
「よし、じゃあ二人とも席に着いていいぞ。それじゃあ、これからの予定を―――」
先生は何かを話し始めたが、僕の耳には一切入らなかった。今はとにかく、美姫さんと話がしたかった。
僕は椅子をひっくり返しそうになりながら、慌てて座った。予想通り、隣はもう一人の転校生の席だった。
逸る気持ちを抑えながら、出来るだけ声量を下げ、美姫さんに話しかけた。
「美姫さん、この学校だったんだね!」
「ええ。………言ったでしょう?『すぐに会える』って、ね」
彼女は微笑みを浮かべた。制服姿の彼女は、白い光に包まれているかのように輝いて見えた。
「よかった………。こんなすぐにまた会えて、本当に嬉しいよ」
「勿論私もよ、流斗君。―――あ、けどそんなはしゃいでいる君に、一つだけ」
彼女は思い出したように言ってみせた。制服のリボンが軽く揺れる。
「―――なに?」
「私が人魚って事は………秘密ね?」
唇に人差し指を当て、静かにそう呟いた。
「もちろんだよ。………それより美姫さん、この島にずっと居たわけじゃなかったの?どうして、転校生なの?」
「………その事は長くなるから、後で説明するわ」
「―――うん、わかった」
僕は一度話を切り上げ、黒板の方を見た。
僕が前を向くと、守永先生がにやにやしながらこちらを見ていた。どうやら、ずっと僕達を眺めていたらしい。
僕は目を逸らすように、窓の外を眺めた。外には空と海が広がり、水平線の向こうで交わっていた。
彼女はぺこり、と礼をした。僕が呆気にとられている目の前で、坊主頭の二人組の男子が「でかい胸だなあ」、「可愛いなあ」と呟き、にやにやとしていた。
だんだんと思考が回復してきた僕は、その場に跳び上がりたくなるような、喜びの衝動に駆られた。
―――すぐ会えるって、こういう事か―――!
僕の胸は高鳴り、踊った。理由はよく分からないが、言葉では言い表せないような至福を体一杯に感じた。
「よし、じゃあ二人とも席に着いていいぞ。それじゃあ、これからの予定を―――」
先生は何かを話し始めたが、僕の耳には一切入らなかった。今はとにかく、美姫さんと話がしたかった。
僕は椅子をひっくり返しそうになりながら、慌てて座った。予想通り、隣はもう一人の転校生の席だった。
逸る気持ちを抑えながら、出来るだけ声量を下げ、美姫さんに話しかけた。
「美姫さん、この学校だったんだね!」
「ええ。………言ったでしょう?『すぐに会える』って、ね」
彼女は微笑みを浮かべた。制服姿の彼女は、白い光に包まれているかのように輝いて見えた。
「よかった………。こんなすぐにまた会えて、本当に嬉しいよ」
「勿論私もよ、流斗君。―――あ、けどそんなはしゃいでいる君に、一つだけ」
彼女は思い出したように言ってみせた。制服のリボンが軽く揺れる。
「―――なに?」
「私が人魚って事は………秘密ね?」
唇に人差し指を当て、静かにそう呟いた。
「もちろんだよ。………それより美姫さん、この島にずっと居たわけじゃなかったの?どうして、転校生なの?」
「………その事は長くなるから、後で説明するわ」
「―――うん、わかった」
僕は一度話を切り上げ、黒板の方を見た。
僕が前を向くと、守永先生がにやにやしながらこちらを見ていた。どうやら、ずっと僕達を眺めていたらしい。
僕は目を逸らすように、窓の外を眺めた。外には空と海が広がり、水平線の向こうで交わっていた。