人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
「………流斗?何ニヤニヤしてんだよ、変な奴だな………。―――そういやお前、水鳴とはどういう関係なんだ?」








僕は水溜まりに映る自分の顔を慌てて見つめた。確かに頬が綻(ほころ)び、情けない顔になっていた。








「え?―――あぁ、引っ越ししてからすぐ、知り合いになったんだ。だから、こんな形で再開して、凄くびっくりしたんだ」








僕は必死に顔の形を修正しながら、返事を返す。








「ふーん?………にしても知り合ったばかりの割には仲が良くなかったか、お前ら」

「―――き、気のせいだよ、気のせい」








焦っているのを悟られぬよう、そう答える。後ろでいたずらっぽく笑う隼の姿が容易に想像出来た。




―――仲がいい、か。








(はたから見たら、そう映るのか―――)








思わず再びにやけそうになる自分を叱咤しながら、そう考える。








(―――でも美姫さんは、どう思ってるのかな………?)








それはすごく気になることだった。

が、それを知る術は無い。当然の事ではあるのだけど。これが片想いの苦しみなのだろうか。




そう考える内に僕はいつの間にか、美姫さんの姿を探していた。
その姿を浜辺に見つけた僕はなんとなく落ち着かず、隼に軽く会釈して立ち上がり、美姫さんの下へ走った。

踏み付けた水溜まりの水が跳ね、制服のズボンへと飛び散った。
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