人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
「―――だから、私の側にいて欲しいの。あなたとならきっと、私はいつかきっと心から笑って、心から泣けるわ」
………頭がぐらぐらしてきていた。思考が上手く働かない。
なぜなら、思いもよらなかった言葉が、彼女の口から洩れたからだ。
それは、僕がいつか彼女に言われたいと望んでいた言葉であり、何より僕を幸せにすることが出来る言葉であった。
「………ダメ、かしら」
「ぼ、僕で………いいの?」
「あなたじゃなければ、ダメなの」
きっぱりとそう言い放つ。
僕の思考回路は働かないどころか、いよいよパンク寸前だった。顔どころか、体中がほてっている気さえしていた。
「―――それなら」
僕は混雑した頭の中を整理し、伝えたい言葉を心で紡ぎ、決意にする。
「僕が美姫さんの為に出来るコト―――何だって、やってみせるよ」
彼女は少し戸惑っていたが、それ以上に嬉しそうにも、僕の目には映った。
「………本当に?」
「男に、二言はないさ」
―――その、次の瞬間。
僕の中の時間が止まった。
背中に回された細い腕と、胸に広がるふんわりとした温かく柔らかな彼女の体の感触。
僕ごと彼女を包みこむ長く美しい黒髪。
目の前に広がる彼女の顔。
僕が、彼女から抱き着かれているのだと気づいた頃には、とっくに僕の意識は事切れていた。
僕は浜辺に大の字に倒れ、海鳥の声と、美姫さんが名を呼ぶ声を聞きながら、朦朧とする意識の中、まだ体に残る美姫さんの感触を確かめ、暗闇へと身を委ねた。
………頭がぐらぐらしてきていた。思考が上手く働かない。
なぜなら、思いもよらなかった言葉が、彼女の口から洩れたからだ。
それは、僕がいつか彼女に言われたいと望んでいた言葉であり、何より僕を幸せにすることが出来る言葉であった。
「………ダメ、かしら」
「ぼ、僕で………いいの?」
「あなたじゃなければ、ダメなの」
きっぱりとそう言い放つ。
僕の思考回路は働かないどころか、いよいよパンク寸前だった。顔どころか、体中がほてっている気さえしていた。
「―――それなら」
僕は混雑した頭の中を整理し、伝えたい言葉を心で紡ぎ、決意にする。
「僕が美姫さんの為に出来るコト―――何だって、やってみせるよ」
彼女は少し戸惑っていたが、それ以上に嬉しそうにも、僕の目には映った。
「………本当に?」
「男に、二言はないさ」
―――その、次の瞬間。
僕の中の時間が止まった。
背中に回された細い腕と、胸に広がるふんわりとした温かく柔らかな彼女の体の感触。
僕ごと彼女を包みこむ長く美しい黒髪。
目の前に広がる彼女の顔。
僕が、彼女から抱き着かれているのだと気づいた頃には、とっくに僕の意識は事切れていた。
僕は浜辺に大の字に倒れ、海鳥の声と、美姫さんが名を呼ぶ声を聞きながら、朦朧とする意識の中、まだ体に残る美姫さんの感触を確かめ、暗闇へと身を委ねた。